音声触図学習システムの紹介
タッチパネルとパソコンを使用した音声触図学習システムの試作とその有用性
細川陽一
森川慧一
【はじめに】
盲学校では、全盲生徒の図形や地図などの学習に触図を使用している。触図の説明は、省略された点字の書き込みや別に説明書きを添える方法が一般的である。これらの方法は、意味が分かりにくく、即時性に欠ける。こうした問題を改善するためのシステムを試作した。その有用性について考察する。
【開発したシステムとその評価方法】
本システムは視覚障害者が独力で使用できること、既存の触図を利用できることを目指した。パソコンに音声読み上げソフト、自作した音声触図学習ソフト、それにタッチパネルを組み合わせ、パネル上に立体コピー触図を載せてダブルタップすると、その点に関する音声情報を得られるようにした。更にパネル上に枠を作成し、用紙の位置を確定しやすくしている。
全盲学生2名に、線と点で構成される既存の触図を用いて、本システムによる学習を行い、独力で使用できるか、触図の情報を素早く得られるかについてアンケートを実施した。
【結果】
本システムを使用するにあたり、「ソフトの起動やメニュー選択は音声が出て、全盲者でも一人で使用でき、ケーブルの抜き差しも簡単である」という回答が得られた。
日本地図の学習では、「説明書きに手を移動させる必要がなくなり、県の位置関係を素早く把握できるようになった」、「点字表記に比べて情報量が多いことから、ひとつの図から多くのことが学べるようになった」、「ゲーム感覚で学習を進めることができた」との感想が寄せられた。
【考察】
説明書や省略字を使わず、触図に触るだけで多くの情報を得られるという、従来よりも効率的なシステムとなった。能動的な学習手段を提供することで、生徒が自立的、主体的に学習できるようにしたい。
音声触図学習システムの改良と多様な音声情報の提供方法の検討
細川陽一
森川慧一
【はじめに】
タッチパネルとパソコンを使用した音声触図学習システムの有用性については、以前の研究で検討した。これにより、即時的に情報が得られる、凡例の点字や別紙を用意せずに多くの情報を提供できることを実現した。反面、触図のどこを音声案内させるかの位置情報(以下、位置データ)を作成することが煩雑であった。
今回は本ソフトを改良して、位置データの作成のしやすさ、多様な音声情報の提供の方法について検討した。
【方法】
位置データの登録方式、登録内容を見直した。説明情報を複数用意し、指定回数の動作で音声案内の内容が変わるようにした。
【結果】
位置データは基準点からの距離(mm)で登録するようにし、パソコン上でのデータ作成だけでなく、実際に距離を測定して位置データを作成できるようにもなった。データはCSV形式のため、Excelなどで並べ替え、置換などの編集が容易にできる。
、点、線、それに面の位置データが重なっても、作者が優先度が高い情報を先に登録すれば、意図したように音声案内されるようにした。面の設定は、小さな点で塗りつぶすようにするのではなく、 1点の認識範囲半径を任意に設定できるようにし、データ量を少なくできるようにした。
1点の提供情報を多重的にすることで、1点を音声案内させ、再度同じ点を指定すると、別の情報を得られるようにした。例えば地図学習では、最初は県名、次に県の特産品の情報が得られるようになった。これにより、地図学習では、ゲーム感覚で音声情報を確認するようになり、自学の意欲が高まった。
【考察】
ソフトの改良により、位置データの作成が容易となり、触図と位置のデータを蓄積することで、本システムの活用が進むと期待される。とくに、1点の提供情報を多重的にすると、音声案内される度に内容が変わり、触図を使用した学習で意欲の向上に役立つと考える。